セロリ案件

世界を征服しようぜ

ごめオサ

ごめオサ


大阪四天宝寺中学がゾンビに囲まれて早数ヶ月。
遂にそのときが来た。
そう、テニス部顧問の渡邊オサムが感染してしまったのである。
自我を失った渡邉オサムは他のゾンビ仲間とは違う場所へと一人ゾリゾリ歩き出した。
向かった場所は、誰もいない荒れ果てた四天宝寺のテニスコート
記憶を失ってなお、彼は教え子たちと楽しく日々を過ごした場所へ向かい、帰省本能で歩いていたのだ。
普段は誰もいないはずだが、なんと運悪くこの日は一人だけ部室にある男がいた。
テニス部部長の白石蔵ノ介だ。
渡邉オサムが感染したとは知らずに部室を出ると、そこには変わり果てた顧問の姿が。
白石蔵ノ介は二択を迫られた。
殺すか、殺さないか。
殺さずに逃がし、もしまたこの部室にやってきたら…そのときは他の部員が犠牲になるかもしれない。
白石蔵ノ介は決意した。
ここで渡邉オサムの息の根を止めることを。
しかしここはテニスコート
一人のゾンビを殺せるほどの武器となるものはなにもない。
…いや、ひとつだけある。
白石蔵ノ介は、その左腕に巻かれた包帯の下に、目の前にいる渡邉オサムから預けられたものを隠し持っているのだ。
ゴールデンアーム。

~回想~
「純金や!」
「せや白石、お前卒業までそれ着けとけ」
「俺の全財産や。見つからんように、ま、いっちょ頼むわ」
~回想終了~

このゴールデンアームは渡邉オサムの全財産。
絶対に人前では外すなと強く言われた、ゴールデンアーム。
包帯をぐるりとほどきながら白石蔵ノ介は語り掛ける。
「ごめんな、オサムちゃん。約束守れへんで」
渡邉オサムは既に人の心を失っており、白石蔵ノ介の言葉など聞こえるはずがない。
それでも白石蔵ノ介は語り掛ける。
「許してや、オサムちゃん。仲間のためやねん」
しかし、白石蔵ノ介にはしっかりと聞こえた。
渡邉オサムの声が。
「ええ、ええ。白石。お前の思った通りに生きや」
ゾンビとなってしまった渡邉オサムの無念を晴らすためにも、ここで果てるわけにはいかないのだ。
「大人になるためには、必要なことかもしれへん」
自分に言い聞かせて、白石蔵ノ介はゴールデンアームを大きく振りかぶった。
「頑張るんやで、白石」
そう呟いて、渡邉オサムはまるで自我を取り戻したように踵を返した。
教え子に殺されることを望むがごとく見せた後ろ姿めがけて、白石蔵ノ介はゴールデンアームを投げた。
「ごめんな…っ!」



ゴンッ



~終~




なにこれ?

ごめオサを聞きながらお読みくださいませ。

ワイプ実況の文字起こしのつもりなので、古舘伊知郎さんの声で再生してくださいね。

ごめオサが聞ける「ミュージカル『新テニスの王子様』First Stage」は2月14日に大千秋楽を迎えます。配信もございますのでぜひ3700ニコニコポイントを握りしめてご鑑賞ください。