セロリ案件

世界を征服しようぜ

「宝生永夢」が生まれた話

仮面ライダーエグゼイド』の小説について。
Vシネの続きとばかり思っていたのですが、時系列は続きであるものの、その実は主人公である宝生永夢の過去を中心としたお話でした。

「読まなくても支障はないが、読んだら本編がより面白くなる」ためのスピンオフ小説として大満足の内容でした。そのことを書きたいと思いますのでネタバレ不可避です。ご容赦。



本編でも何度も出てくるエピソードとして、永夢の交通事故の話があります。この交通事故について大事な点は、3つあります。

1つは、永夢が交通事故に遭って大怪我を負ったこと。
2つは、大怪我から救われたことで命の大切さを感じたこと。
3つは、入院中に担当医の恭太郎先生から「元気になるように」とゲームを貰ったことをきっかけに、患者を笑顔にする医者に憧れるようになったこと。


私は3つ目の点がずっと引っ掛かっていました。
いくら大怪我を負って大手術を受けたからといって、8歳の患者にゲーム機を与えるのかな、と。
ゲーム機なんて高価なものを特別に与えてしまって波風たたないのかなとか、そもそも特別扱いしてはいけないのではとか。
そして永夢も、ゲーム機をくれたことではなくあくまで自分を笑顔にしてくれた先生に憧れて医者を目指すようになった、とはいうものの、なんか腑に落ちないなと思っていました。


小説を読んで、パズルのようにすべてが理解できました。

転校してきたばかりの8歳の男の子。
登校時、通学路と正反対の道で遭った交通事故。
父子家庭。
一度もお見舞いに来ない父。

この状況を、恭太郎先生は理解したんですね。

父親の仕事の都合で転校を繰り返していた永夢は、なかなか友達が作れずにいました。
二人暮らしの永夢にとって、見知らぬ土地で唯一の「知っている人」は父親だけ。にも関わらず、父親は仕事が多忙で一緒に過ごす時間は殆どない。
毎日が辛くストレスを抱えていた永夢は、「ゲーム病のふらつき」と「生きていたくないという願望」が重なってトラックに追突されます。
そして、入院。父親は通学路と正反対の場所で事故に遭ったことで、自ら飛び込んだことを察して失望します。仕事が忙しいこともあり、お見舞いにも一度も来ません。

誰一人味方がいない永夢にとって、殆ど同じ時間を過ごしていないとはいえ、父親は唯一の拠り所だったんです。そんな父親も全く会わないようになったところで、恭太郎先生をはじめとする医者や看護師さんと出会います。

そして、お友達どころか父親さえもお見舞いに来ない永夢に、恭太郎先生はゲーム機をプレゼントします。「君が元気になるお守りだよ」と言って。


そりゃあ嬉しかっただろうな、と思いました。「死んでも誰も困らない」と思っていた自分のために心を配ってくれる人がいると分かって、心強かっただろうなと。

永夢は死ぬ恐怖を味わったから命が大切だと分かったと言っていました。
ただ、永夢は常々言っていました。「患者を笑顔にすることが僕の使命だ」と。

永夢はあのとき恭太郎先生から笑顔にしてもらわなければ、また同じようなことをしていたかもしれません。恭太郎先生がいなかったら、今の永夢は存在しないどころか、そもそも永夢は命を絶っていたかもしれません。

そういう意味で、恭太郎先生は永夢にとって「命の恩人」だと感じました。


夏映画トゥルーエンディングでは、まどかちゃんの病気は完治していません。現代医療の限りを尽くし、この先辛い治療があっても「生きていきたい」という気持ちを失わずにいられるよう努めるのが永夢の思う医者であり、理想なんです。

病気やケガが完治すれば終わり、ではないんですよね。完治したその先の未来を生きていくために、笑顔を取り戻す。それが、永夢の目指す医者像。そしてその根元には、同じように笑顔を取り戻してくれた恭太郎先生という存在があります。宝生永夢のルーツは、恭太郎先生の信念だったのです。



トゥルーエンディングでの永夢の「子どもの笑顔を守るのは、僕たち大人の役目じゃないか」というセリフ。私はこのセリフが好きで、当時映画館で観たときに感銘を受けました。奇しくも私は永夢と同い年。彼が無条件の愛を持っていたように、私も分け隔てなく人を愛していきたいです。




本当は小説を読んだ頃に書いていたのですがあげ忘れてました!!週末のジオウがエグゼイド回なのであわせて投稿致します。ジオウの今後も楽しみ!