セロリ案件

世界を征服しようぜ

死因は病か事故か

仮面ライダーエグゼイド』(以下エグゼイドと省略)に登場する人物、九条貴利矢。職業は監察医で、仮面ライダーレーザーに変身します。彼の友人の1人、淳吾はゲーム病でこの世を去りました。しかしゲーム病によって死亡したのではなく、九条貴利矢にゲーム病と診断告知されたことに動揺し、その恐怖が頭を離れない日を過ごした結果、交通事故を起こして命を落としたのです。


今回私が考えたのは「ゲーム病を患った九条貴利矢の友人が交通事故によって死亡した」ということについてです。よろしくお願いします!


「ゲーム病を患った友人が死亡した」という貴利矢の話。これはエグゼイド本編4話で語られたものですが、最初は永夢に「友人がゲーム病で消滅した」という嘘として口にしました。しかし「彼の友人はゲーム病で亡くなっていない。あれは交通事故だった」と明日那に種明かしをされています。その場では友人の死とゲーム病は無関係のように扱われたものの、嘘ではあるが真相でもある、むず痒いシーンでした。確かに直接の死因はゲーム病ではありません。しかし、ゲーム病にならなければ彼は交通事故を起こすほどの恐怖に襲われずに済みました。そして、その告知をしたのは貴利矢。どれほど後悔したんだろうと思ってなりません。


中盤で「ゲーム病で消滅した人間がバグスターとして蘇る」展開を見せたエグゼイド。リアルタイムで見ていたときは毎日のように「貴利矢復活?」「小姫ちゃんは?」といろいろ考えていました。懐かしいなぁ…。
そして、その話題を見かける度に思い出してしまうのは「でも貴利矢の友人は蘇らない」ということでした。彼はゲーム病であったとはいえ、消滅したわけではないからです。交通事故で人として亡くなっています。



仮面ライダーでは人が生き返ることは珍しくありません。

「敵の力によって命を落とす、または存在が消失する」ことはよくありますが、それに該当する人が何らかのかたちで蘇ることもよくあります。例えば『仮面ライダーフォーゼ』の主人公如月弦太朗なんかは、敵(厳密に言えば敵ではないが)によって心肺停止になるもののフォーゼのなんやかんやの力で息を吹き返します。
また「事故等で命を落とした」人が蘇ったケースもあります。例えば『仮面ライダーアギト』の芦原亮はこの類いです。戦いの末川で溺死しますが、1人の少女の力で蘇ります。
こういった「仮面ライダーあるある」を見ることによって「死ぬ」ということが私のなかで曖昧になっていました。人は死んだら生き返らない。けれど、この世界での「死」はもしかして、と思ってしまうようになったのです。

エグゼイドの最終回でも「今は消滅してしまった人もバグスターとして復活出来るようにすること」そして「バグスターとなってしまった人を人として復活させること」を予感させる描かれ方をしていました。

ここで際立つのは「ゲーム病」はあくまで病気のため「消滅」や「バグスター化」は病気の症状と捉えられていることです。これらは人の「死」とは全くの別物なのです。

このように、エグゼイドにおいて「死」と「消滅」はうまく線引きがなされていました。


やはり、淳吾は死んだのだと実感しました。
彼の死因は事故死。そのため、45話で永夢がゲーム病で消滅した人の名前を読み上げるなかにも彼はいなかったことでしょう。

とはいえ、淳吾のような人は他にもいたのではないでしょうか。

淳吾のように、ゲーム病と宣告されたショックで事故を起こした方。
白川先生のように癌に罹患しているなかでゲーム病に感染した方。
まどかちゃんのように、脳腫瘍を患っているなかでゲーム病に感染した方。
永夢のように、ゲーム病特有の頭痛によるふらつきで対車事故に遭った方。

たとえ彼らが亡くなったとしても、彼らの死因はゲーム病ではありません。きっとこういう方がエグゼイドの世界には多かれ少なかれ存在したはずなのです。そういう方が、消滅した人物が復活している姿を見てどう思うのでしょう。
奇しくも自身も消滅しバグスターとして復活した貴利也は、ゲーム病の患者のためのワクチンを作成する日々を送っています。しかし彼が一番助けたかった相手は、どんなに手を尽くしてももう返ってきません。貴利也はもう報われたのか、もう過去を精算できたのか。語られた以上のことは分からないのです。


お喋り枠なのに自分のことは煙に巻く貴利也のことなので、今後も多くを語ることはないでしょう。語られないことを忘れられてしまわないよう、覚えておきたいなと思います。